過去のことは話さなくてもいい

今通っている精神科の先生は、患者との対話を大事にしてくださいます。私は何も用意せずに話すと話があちこちへ飛んだり、限られた時間で伝えたいことを伝えきれないと思うので、いつもメモに前回の通院から今回までの間のできごとや体調の変化などを箇条書きにして行きます。それを先生に見せながら、口頭でやりとりをします。

ただメモが長くなってしまって十分に話ができなかったり、自分の状態の変化をうまく伝えられていない感じがしたりして、どのように書けば最もよく伝わるのかと悩む時がありました。しかし、先生に率直に「どう書けばいいですか?」と聞いても、「これでいいですよ。」と言われました。

私が転院後に悩んだのは、先生にどのくらい自分の過去のことを話すべきかということです。
初診時の資料として、自分でA4にこれまでの経緯や飲んだ薬についてはまとめて提出しましたが、たとえばそこには書かなかった躁エピソードのこととか、時々フラッシュバックする昔の記憶などを診療時に具体的に話すべきか悩みました。先生に「過去のことを話した方がいいですか?」と聞いた時には、「何でも聞きますよ。でも全部聞くには時間が足りないから、思い出した時にね。」と言われました。

先生は転院前の先生と同じ診断で妥当だと思っているようで、たぶん私がまだ話していないことを話したところで、診断が変わることはないだろうと思います。以前は、変わるかもしれないとも思っていました。それに、先生にはできる限り自分のことをよく知ってもらいたかったのです。
だけど、できるだけ詳しく伝えようと自分の過去のことを振り返れば振り返るほど、具合が悪くなるのです。思い出して人に話すことをした方が良いとは限らないし、かえってそれを繰り返すことが悪影響になることもあるようです。

そのうちに、知ってもらう目的で過去のことを先生にいくら伝えても仕方ないのだと気付きました(先生に診断や治療に必要だと言われれば別ですが)。基本的には今この時点で起きていることを相談して、助言をもらったり薬を出してもらったりすることが診療のメインで、過去のことは先生に何か言ってもらえたとしても、変えることはできないんですよね。

過去を悔んでも、誰かを恨んでも、先生を頼っても、自分のことを救えるのは結局自分…。私の苦しみには過去の記憶とか未来の不安がたくさん混じっていて、それらを自分で切り離すことができるようになれば少しはラクになるかもしれません。
先生には「自分の心に背かないで」と言われます。自分の人生を生きているつもりで自分の心がどこにあるのかわかりませんでした。今は「今後の人生は自分次第なのだ」と自分に言い聞かせています。

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