『発達障害の僕が「食える人」に変わったすごい仕事術』

著者は借金玉さんという発達障害を持つサラリーマン。ブログに書かれていたものがまとめられた本です。

この本のタイトルを最初に見た時、発達障害者の仕事に関する話なのだと思ったのですが、レビューを見て読んでみようと思ったのが手に取ったきっかけでした。仕事の話だけではなくて、人間関係、生活、薬や酒、鬱に関わることなども含めた著者の経験から導き出されたハックとツールが満載でした。

医師や専門家が書いたのではなく、発達障害を持つ著者の目線で書かれていることで、読んでいて「あるある」と共感できる部分や素直に受け取れる部分が多かったと思います。文章もとても読みやすくわかりやすかったです。当事者としてうまく言語化してくれる人がいることで、救われる人も多いのではないでしょうか。

冒頭のほうに「僕はスティーブ・ジョブズではないことに気づいた」という話が書かれていて、これにはとても心を掴まれました。少なからず私にも同じような思いがあったからです。メディアでよく発達障害者の特殊能力に焦点を当てて騒がれていますが、やっぱり自分の中にも、人と違った生き方をしている分、何かしら可能性があるのではないかという期待がありました。この本ではそういった特殊能力で何かをなし得たという話ではなく、仕事や生活や二次障害の症状で苦しんでいることを自分なりに乗り切る工夫が書かれています。

私が読んでいて特に腑に落ちた話の1つは、医師や家族に「無理をしないように」と言われてもなぜそれが難しいのかということです。今も何かするのにエネルギー配分がうまくいかずにやり過ぎてしまうことがよくあります。
それから「何もしない」のは難しいという話。何もできなくなることもありますけど、私は基本的に何もしないのが本当に耐えられません。鬱状態の時の話でこのことに触れられていますが、「鬱の時は何もしないのが良い」と言われることについて、改めて考えさせられました。
あと、私は自己肯定感がとても低いですが、どうやって自己肯定すればいいのかという話。これならできそうだなあと思いました。ものの考え方の話でもあるのですが、こういうことって上から目線で言われないからこそ受け取りやすいと思います。

この著者が独自のハックとツールでサラリーマン生活を送れていること、こうした本を書き上げられることを羨ましく思う部分もあるのですが、客観的に見た障害の重さ軽さで当人の抱える苦しみは計れないと思うのです。私は「自分のダメさをどうやって活かすか」を考えていますが、そのことをまさに実践されていると感じました。読み終えて胸が熱くなり拍手を送りたい気持ちになりました。

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