シャーロック・ホームズと躁鬱、発達障害

ヴィクトリア朝への興味から『シャーロック・ホームズ』のドラマシリーズを観たら、意外にも親近感を持つ要素が多いことに気付きました。

『シャーロック・ホームズの冒険』主演のジェレミー・ブレット氏は、まさに子供の頃読んだ児童書のホームズのイメージにぴったりでした。すっかりブレット氏の虜になり調べると、彼が双極性障害でバイセクシュアルであったこともわかりました。

心臓も悪く、全話を映像化させることは叶わぬまま亡くなったそうですが、病気を患いながら演じぬいたことを知って、後半は特に感慨深い気持ちで観ました。知的で上品ながらテンションの浮き沈みの激しい変人ホームズを見事に演じていたと思います。彼は双極性障害であることを公言し、同じ病を持つ人たちを勇気づける活動も行っていたそうです。

『シャーロック・ホームズの冒険』を見終えて、今度はBBC製作の『SHERLOCK(シャーロック)』も観てみることにしました。舞台が現代のロンドンということで最初は少し敬遠していたのですが、観てみたら第1話ですっかりハマりました。

この『SHERLOCK』では、ホームズとワトスンが互いをシャーロックとジョンと呼び合います。シャーロックはかなりアスペルガー症候群(現在は自閉症スペクトラムと呼ばれる)の性質を強く感じさせる描き方がされています。実際にジョンが彼を「アスペルガー」だと言っているセリフがありますが、字幕は「発達障害」とされていました。

シャーロックの特徴をあげると、モノの細部に目が行く、聴覚や嗅覚、味覚が鋭い、記憶力が良い(おそらく映像記憶が可能)、興味のないことは覚えない、生活やお金に無頓着、空気を読めない、退屈に耐えられず依存的…などなど。
推理してわかったことを人に率直に伝えすぎるので、それが探偵としての力にもなるのですが、ジョンに「見事だ、素晴らしい」と褒められた時には「普通はそんなことは言われない」と言っていました。

シャーロックは自称「ソシオパス」(社会病質者、反社会性パーソナリティー障害)ですが、やはりそうではなくアスペルガーだと思います。友人がいない、非情に見える、というのはコミュニケーションに問題があるためで、ジョンと過ごすうちに人間味が見えてきます。興味があることとないこと、できることとできないことの差が激しいのです。

彼の言葉を翻訳しできないことを補ってくれるジョン、そしてハドスン夫人やレストレード警部などの理解者たちがおり、おかげでシャーロックは自分の強みを発揮することができる、これは発達障害者にとって理想的な状態だと思います。
私は彼のダメな所に関しては見ていると身につまされるような場面がありますが、ジョンへの同情とともに、彼と同様に私を支えてくれるパートナーへの感謝を改めて感じました…。ホームズとワトスン、シャーロックとジョンのパートナーシップこそが、この物語の最大の魅力なのだと今になってわかりました。

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